第13回愛媛主権者教育研修会報告

第13回愛媛主権者教育研修会報告

2022年9月3日(土)午前10時~12時@オンラインにて、第13回愛媛主権者教育研修会が行われました。本会は、「主権者育成のための学習評価のあり方」について考えることを目的として、香川大学の神野幸隆先生に「政治的主体としての市民の育成を目指す問題解決的な学習の実践と評価」という題目でご講演をいただきました。

以下は、ご講演の概要です。

1.政治的主体とは!?

神野先生が目指されているのは、政治的主体者の育成です。政治的主体者とは「社会(政治)生活世界における対立や葛藤、矛盾を踏まえた討議を通して、政治的関与や条件を見直し、さらには自己決定を行っていく主体」と定義されています。政治的主体育成のためには、特に公的な問題や課題について選択・判断する(構想する)学習活動が重要になります。

2.選択・判断(構想)とは!?

初等社会科における「選択・判断」の授業の基本は、次の二つです。

①(地域)社会や農水産業工業や政治の在り方(高学年・中学年)

(例)これからの水産業で大事にしていくことは?自然災害時にみんなに助け合える地域って人々はどんな関係なのか?

②自分たちの関わり方、協力の仕方(中学年)

(例)自分たちにできることは?

特に小学校現場では、「考える」、「選択・判断する」活動が軽視される点が課題として挙げられています。主な学習内容は、みんなにとっての問題解決の手立てとしての「政策」、方法は様々な考えを持つ人たちとの協働的な学びとしての「討議」となります。考えを深めるための視点として、「行為主体(誰が担うべきか?)」、「対象や目的(何のために、誰のために行うのか?)」を設定することがポイントとなります。

3.初等社会科の指導方略(極意)

「初等社会科ならではの指導方略(極意)」について次の二点を紹介していただきました。

①自分と対象とのつながりや関連が見えること

②「人物関係図」でいったん学習内容と自分との関わりを整理すること

指導を行ううえで、市民や消費者の「願い」を基に考える機会を設定することが、社会問題を当事者として考え社会参画を促すためには重要となるようです。

4.評価について

評価のポイントについては次の二点が重要となります。

①「概念」にたどり着いたか。(知識・技能)

②社会参加しようとする意欲や態度が芽生えたか。(主体的に学習に取り組む態度)

「子どもは「振り返ろう」と指示すると、後ろを向くだけである。よって、評価は狙って取りに行かなければならない。」という神野先生の主張が特に印象に残りました。子どもの思考の成長を見取ろうとするのであれば、子ども目線で具体的な指示を行うことが大切になることを改めて学ぶことができました。

自己調整に関しては、「子どもに「ハンドル」を渡さなければ子どもは自ら目的地に向かって進もうとしない。」ので、「単元最初の予想と途中「見直し軌道修正する」時間を設定すること」が重要となること、子どもが見直す(調整する)視点として「内容・方法・計画・目標」があることを学ばせていただきました。一斉授業ではなく、問題解決学習を充実させるからこそ、子どもが自力で学ぶことができ、自己調整につながるという主張に共感しました。

神野先生のご講演から全ての参加者は、明日の授業作りの面白さややりがいを実感したことと思います。神野先生、すばらしいご講演をありがとうございました。

また、本日は小中高等学校及び大学の先生方、教職を志す学生さんにご参加いただきました。参加者の皆様に心より感謝申し上げます。

ありがとうございました。