第3回愛媛主権者教育研修会報告

第3回愛媛主権者教育研修会報告

 令和3年度12月18日(土)午前9時30分~12時に第三回愛媛主権者教育研修会がオンラインで開催されました。学生や教員など約30名の方々が参加し、社会参加に着目した小学校社会科・主権者授業のあり方これから求められる主権者教育のあり方について考えました。
 第一部は、岡山理科大学准教授の紙田路子先生に「『社会に開かれた教育課程』における参加学習論―子どもの社会参加と市民的資質の育成を通して―」について、講演をしていただきました。第二部は、山口大学講師の田本正一先生に「外部機関と連携した小学校社会科学習の展開―ノットワーキングからの考察―」について、講演をしていただきました。第三部は、講演の内容をふまえ「外部機関と学校の連携に着目した小学校社会科授業づくりのポイント」について活発な意見交換が行われました。
 お二人のご講演から、主に「納得解を求める学びは社会に開かれた学習活動=社会参加学習だからこそ実現可能であること」、「大人と子どもの対称性に基づく関係を重視した学習の充実が社会参加に着目した授業の推進につながること」という点について示唆を得ることができました。教師が外部機関と交渉する際には、外部機関の「困りごと」に着目することがポイントになるということも明らかになりました。
 外部機関と連携する意義は、社会問題や課題解決の担い手を実質的に育成していく点にあると言えます。その際には、専門家である大人の取り組みの意義だけではなくその限界もあわせて取り扱い、その限界を乗り越える方法について議論する活動を充実させることが必要となります。子どもだからこそできる考えを引き出し、大人と子どもに議論の意義を実感させる教室空間を創出することが、地域社会と連携した主権者教育の課題と言えるのではないでしょうか。
 講師の皆様、参加された全ての方々に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

(シティズンシップラボ・井上昌善)

【当日の様子】

紙田先生のご講演の様子
田本先生のご講演の様子

【主なご意見】

〇紙田先生の政治的関心のお話について。自分の周りの人たちも若いかどうか関係なくデモというものを野蛮で品がないと思っている人が多く、そのことに関して興味があったため2人の先生方の話を通じて、社会との連携の在り方を改めて振り返ることができました。

〇ぜひ、もっとお話ができたらと思います。また、自分の悩みをこの場でお話しさせていただき、いつもながら心強いです。ありがとうございました。

〇外部人材との連携についての難しさという部分が印象に残りました。私自身も今後学校現場に出てそのように外部の方の連携していく必要は感じているのですが、外部の人に任せっきりにならないことやこちらの狙いとしているところをしっかりと伝えていくことなどを行わなければならないと思いました。外部人材を活用するのではなく、ともに学んでいくという姿勢で取り組む必要を強く感じました。

〇紙田先生の「納得解」をつくりだすことやそれを求める能力について。論争問題学習研究における意義についての示唆を得られた。ロジャー・ハートの参画のはしごについては、実践された授業を高い位置に置かれていたが、それまでの過程も(社会科で行うか否かは置いておいて)重要であると考える。また、田本先生の「ノットワーキング」の理論について。初めて聞く言葉や考え方であったため、大変勉強になった。

〇紙田先生からご指摘があった、現場教員の意識の薄れが印象に残りました。決まりを守ることを重視する若者の傾向の一因として、過度に規律を守らせる学級経営や権威的に児童接する教員の態度が影響しているのではないかと考えました。この点については、自身の教師としての在り方を問い直す視点にしたいです。

〇小学生の提案であっても、行政側にプラスの何らかの影響を与える可能性があること。高校生ならば、なおのことそれが出来なければならないし、そのように指導できるよう、教員がプライドを持たなければならない。

〇外部連携を意図した学習でも市民社会と共に学び合うことが必要であること。

〇受動的な若者がこれからの社会を変えていくためには、新しい解や納得解を生み出す力を身につける必要があるということです。児童にとって自分たちの考えが実際に何かに影響を与えることができると嬉しいと思うし、衝突や葛藤を感じながら対立するだけで終わるのではなく自分の意見と他人の意見がバランスよく存在できる答えを見つけることが社会では必要だと思ったからです。

〇紙田先生がお話ししていた「よりよい市民像」の教育現場におけるイメージが、社会から求められているような自分の意思で行動する能動的な存在というよりも、権威者から言われたことを忠実に守って行動するといった受動的な存在の方が大きいということです。こうした問題意識からも、子どもが自分の意見を自由に発することのできる環境を作ったり、社会の問題は自分たちにも関わる問題であるということに気付かせたりする役割として、教員という仕事があるのではないかと感じました。来年から小学校の教員になりますが、社会科を中心としてこうした働きかけができる教員でありたいと思いました。

〇紙田先生のお話の中で出ていた、主権者意識(市民意識)の調査結果が興味深く、その要因に学校教育や社会科の授業での影響がどのくらいあるのだろうと考えさせられました。また、先生方が「ルールを守ること」に意識が強く、慣習にも疑問を持たない・持てないということについて、その原因がどこにあるのだろうと思いました。

【本会に期待すること】

〇井上先生にお示しいただきました、現場で授業研究を深める方法について、私も皆様と話をしてみたいです。

〇主権者教育の授業づくりにおいては、視野を広くして教材を集めていくことが必要だと考えています。全然違うと思える分野から「こんな角度から教材化することができるんかい!」という提案がなければ、次第に“主権者教育”のための主権者教育になりそうです。ユニークな実践や提案があれば情報共有する場をいただきたいと思います。

〇主権者教育の実践例を、具体的に年間計画の中や校内での周知の仕方など、授業づくりの進め方を学ばせていただければありがたいです。