第17回愛媛社会科・主権者教育研究会(成果報告)

第17回愛媛社会科・主権者教育研究会(成果報告)

2023年11月23日(土)15時30分~17時30分に@オンラインにて、第17回愛媛社会科・主権者教育研究会が行われました。今回は、上越教育大学附属中学校の仙田健一先生と、藤田譲先生に、「市民性育成を目指す社会科授業づくりと評価」について、以下の①~③の視点をふまえてご講演をいただきました。

①中学校社会科授業を通して育成を目指す資質・能力について、②①を見取るための評価の実際について、③「自己調整」の観点からの実践の振り返り

そのうえで、「市民性育成を目指す社会科授業づくりと評価」のポイントや課題、また子どもの自己調整を促し実現するために必要な指導などについて、参加者同士による意見交換を通して考えていきました。

【仙田先生のご講演の様子】

【藤田先生のご講演の様子】

【意見交換の様子】

仙田先生には、民主主義における市民的責任の自覚化を促す授業実践についてご発表いただきました。具体的事例の考察と議論を通して、民主主義の抽象的な概念を捉えさせることを目指されており、とても興味深いご実践でした。また藤田先生には、地域的課題について外部人材と議論することで、制度や政策について議論する市民の育成を目指した授業実践についてご発表いただきました。議論による外部人材の方への影響からは、学習が有するインパクトの強さを感じることができました。

お二人の先生方のご発表からは、単元を通して育成したい市民性を明確に設定した上で、学習内容と方法の工夫により、他者(級友や外部人材)や社会(地域)と関わる状況を設定することで、生徒の学びや評価のサイクル(自己調整)を促すことにつながるのではないかと気付くことができました。

本日は、社会科の授業作りや評価について熱心に勉強されている学校現場の先生方、法教育委員会の委員弁護士の方々、大学の先生方など、多くの方々にご参加いただきました。ご参加いただいた皆様に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

【主な参加者のご意見(「特に印象に残っていること」を含む。)】

・主権者教育の授業づくり。公共に今年度初めて挑戦し、主権者教育に本腰を入れて取り組んでいるだけに、どんな授業づくりが必要なのかを考えることができたから。
・私は、法教育に取り組んでいる弁護士なので、その観点からの感想になりますが、もっとも印象に残ったのは、市民性と民主制・責任が密接に結びついているという点を改めて見つめ直すきかっけとなった仙田先生のご報告が、とても興味深いものとなりました。
・いかに「自己調整」を浸透させるか。評価について形成的評価と総括的評価が混同している人がまだ多い気がするから。
・今回の講義を通して印象に残ったことは「自己調整」という考え方である。教師が生徒に学びを与え、生徒の成長を見取っていくだけでなく、生徒たち自身が、自己調整を自ら行い、自分自身でアップデートをしていくことも大切であることを理解できたことである。
・自己調整。生徒1人1人に合わせて資料提示をしたりすることで生徒が能動的に授業に取り組んでくれると思う。
・市民性の設定、教師の単元を通して育成したい生徒の姿を明確にする必要性を実感した。
・熟議すること、なかなか実践の中で生徒同士の議論にならないことが多いので、それをどうやって実現しているのかを知りたいと感じた。また、その議論が生徒にとって自己調整等にどのくらい役立ったという実感が有るのかも知りたいと思った。
・単元ごとに、育てたい市民性の要素を設定してその育成を図ること
・自己調整についてのご説明 
・個人が自身の意見を形成するということは、各人の知識・経験が必須だと思います。何を言ったらいいかわからない、どう考えたらいいかわからないというのは、(場合によっては人生を通じて)知識・経験が不足していることが主張な原因だと感じております。先生方のご指導の工夫によって、生徒が情報の取得の仕方、情報の取捨選別、情報の順位付け、情報の整理の仕方、論理の組み立て、評価などを経験し、自分なりの結論を出せるようになっていく過程を見させていただいたことが印象に残っております。
・生徒同士の議論の内容について。生徒に熟議をさせることは重要であるが、扱うテーマの内容をどうしたらよいのか(現代社会で起こっている内容なのか、歴史上起こった出来事なのかということや答えの出ている問題を考える際にどう向き合わせたらよいのか等)について考えていく必要があると考えたため。
・藤田先生の実践から、生徒が課題解決の際の判断などをおこなうときの根拠の集め方について印象に残りました。仕事上で研究授業などの指導案を見ると、課題について議論する授業がとても多いのですが、どのようにすればどのように深まるものなのかいつも気になっているためです。
・子どもたちの自己調整の見取るためには子どもたちが学びたいと思うことのできる教材設定や多様な意見を出せることができる学習課題の設定が非常に重要だということが印象に残った。
・教師自身が指導要領などに即して単元に応じて市民性を設定していくことが求められているということ。理由は市民性を設定するためには教師自身が市民性について言語化をし、理解しておかなければならないと感じ、これは他の民主制や責任なども同様であると思い、今のうちから自分の中で単語について考えていく必要があると考えたから。
・社会科における自己調整を考えていく必要があること
・私は、民主主義における責任の自覚ということや実践での誰に責任があるのかという話に対して、あまり疑問を持たなかったが、弁護士の方が責任の定義づけに疑問を持っていたり、どんな責任があるのかということを教えていただいたりして、使う言葉の定義づけの重要性に気づくことができたため印象に残った。
・子どもに自己調整を促す(調整せざるを得ない)状況を教師が設定することが、子どもの自己調整を促すことにつながっていると考えた。そのためには、教師が自らの授業実践において子どもがどの場面で自己調整していたかを見取る、という後付けでは難しく、目標(自己調整する対象)・内容・方法(自己調整する対象に対してそれをせざるを得ない状況)の面で、必ず教師の意図が入っていると言えるのではないかと考えた。
・「自己調整」とはどうすることなのか、自分なりの考えがまとまりません。そもそも不勉強なのでお恥ずかしい限りですが、自分自身、今まで自己調整しながら学習してきたのかさえよく分からず、どう生徒に伝えていくのか、悩ましいなと思いました。根底に、子どもの自己肯定感を高め、自分の考えを臆することなく言えるように、環境を整えることの重要性も感じています。すみません、本題と逸れているかもしれません。
・社会科教育で達成すべき「市民性」をどのようにイメージするかという点。イメージを生徒に共有していくことが必要だとあったが、それを教師と生徒とで共有することは本当に難しいので、今後、どのような手立てをとればよいのかを追究していきたいと思ったから。