第2回愛媛主権者教育研修会報告

第2回愛媛主権者教育研修会報告

令和3年度11月20日午後2時~4時30分に第二回愛媛主権者教育研修会がオンラインで開催されました。学生や教員など総勢30名以上の方々が参加し、これから求められる主権者教育のあり方について考えました。
 第一部は、東京学芸大学准教授の渡部竜也先生に「主権者教育における政治的中立性」について、講演をしていただきました。第二部は、主権者教育の研究においても特に注目されている論争問題学習を学校現場で推進するための方法や手立て、学習評価のあり方に関して講師と参加者で意見交換が行われました。
 印象的だったのは、「『主権者教育』は『教育』であって『学習』ではない。よって、子どもは最初から関心を持っているわけではない。」という点や「その人の立場になって考えさせることを強要する指導は『当事者性』の育成にはつながらない。」という点です。現在行われている学校現場の実践の意味を改めて問い直し、主権者教育だからこそ育成すべき資質・能力を考えることの重要性を学ぶことができました。
 講師の皆様、参加された全ての方々に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

(シティズンシップラボ・井上昌善)

【当日の様子】

【参加者の主なご意見】

〇高校生の主権者教育副読本指導資料にも「政治的中立の確保等に関する留意点」の項目がありますが、そもそも「政治的中立」という言葉自体にうさん臭さを感じていますし、あえて「政治的中立」を確認されていること自体に、多くの先生は政治的意図を感じていることと思います。また、Q&Aには、「(個別の課題に関して)教員が特定の見解を自分の考えとして述べることについては、教員の認識が生徒に影響を与える立場にあることから、避けることが必要です」とはっきり書かれています。確かに影響力を持って圧倒することはだめでしょうが、先生が自身の見解を十分に語れない社会で、教え子が自らの見解を述べることにどれだけの意義を見出せるか疑問です。大事なことは、「先生の言ってることはどこまで本当かな?」と思わせられる力をつけていくことでしょう。

〇トピック⑥に関して、行政は確かに怪しいかもしれません。松山市限定かもしれませんが、行政ともめることも多々あります。だからこそ、このような場はありがたいと考えています。

〇渡部先生、貴重なお話をありがとうございました。内容が面白くて最初から最後までメモをとる手がとまりませんでした。最後の方にお話があった評価については私もその難しさを感じていて、フィードバックをしあげることは大切ですが、それを”評価”と位置付けるのはどうかと思ったりもします。また、個人を評価するというよりかはそこで行われた議論自体を評価してあげた方がいいのかなとも思いました。そうすることで、議論をもっとよくするにはどうしたらいいかと、自分たちの問題として考えることができるのではないかと思いました。ありがとうございました。

〇主権者教育を中心に、様々なお話をありがとうございました。また、愛媛大学学生の質問にも丁寧に回答していただき、とても勉強になりました。特に印象的だったのは、主権者教育に関するお話の中で、日本はよりアメリカ型の主権者教育に着目すべきではないかということです。主権者教育のゴールを選挙のみに絞らず、むしろ選挙を始まりとして政治・政策に関心を持ち続けることや意見を形成することは、以前から感覚的に重要ではないかと薄々思っていました。今回のお話を通してその重要性を改めて確認することができました。また同時に、公共圏の多重性を認識し、政治的諸問題の理解を通して身近な人々の間でも世論を形成していく機会を設定することが大切だと思いました。引き続き、勉強をしていきたいと思います。貴重な機会となりました。ありがとうございました。

〇先日はご講演ありがとうございました。どれも興味深かったのですが、特に印象深かったのがアメリカの政治関心の高さの所以に関するお話でした。メディアで放映される様子から、アメリカでは政治教育を積極的に行っているのだと思っていました。しかし、実は教育されたというよりもアメリカという狭いコミュニティの集合体でできた国そのものが、人々の自治意識を高めているのだということを知り、アメリカの議論の活発さや選挙への関心の高さの所以は、そういった環境によるものだと納得がいきました。日本で議論する環境を自然に生み出すのは難しいと思うので、学校教育の中で積極的に議論する機会を作っていきたいと思います。

〇主権者教育や論争問題学習など、多くのとても勉強になるお話をありがとうございました。政治的中立性や論争問題学習、学校現場での評価や現状など多くのことを知れる機会になりました。その中に選挙には限界があるというお話があり、そのような中でどのような子どもを育成していく必要があるのかなど、改めて考えさせられるものでした。自分が教員になった際に現場で主権者教育や主権者育成の社会科などを実践できるように勉強していく必要があり、現場に出てからも多くのことを学び続けなければならないと感じました。これまでには考えたことのない視点などのお話も多くあり本当に勉強になりました。自分のより関心のある歴史の授業についても今回聞くことのできたお話を参考にさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

〇主権者教育はその国や地域での政治システムとセットで考える必要があるという点は特に首肯しました。それぞれの国や地域によって置かれている文脈は異なるため、○○ではこうやっていたからそれをそのまま日本でやってみようということの困難さは確かにあるように思えます。
 ルソーの社会契約論では「イギリス人民は、自分たちは自由だと思っているが、それは大間違いである。彼らが自由なのは、議員を選挙するあいだだけのことで、議員が選ばれてしまうと、彼らは奴隷となり、何ものでもなくなる。自由であるこの短い期間に、彼らが自由をどう用いているかを見れば、自由を失うのも当然と思われる。」とあり、選挙だけでは変わらないという現実が当時から存在していることが分かります。だからこそ仰られていたような世論形成の在り方などにも着目して主権者教育が選挙教育のみにならないような授業の形成が必要であることを実感しました。また、単発の授業では主権者意識を育むことは難しく、校種を超えて継続的に取り組めるように普段の授業に加えて異校種間の取り組みの共有などが出来ればよりよくなるように思えました。

〇先日は主権者教育を中心とした貴重なお話をして頂きありがとうございました。渡部先生の監訳書は何冊か読ませて頂いているのですが、その本の内容の真意であったり、今回のセミナーだからこそ聞けるようなリアルなお話をしてくださり、大変勉強になりました。特に、主権者教育が行われるようになった歴史的経緯であったり、アメリカの主権者教育の特徴などは初めて知るようなことが多く、これまで日本の教育の現状を知ることに精一杯であった私はもっと海外や歴史に目を向けるべきだと強く感じることができました。また、教育と学習の違いについても、主権者教育はやはり「教育」なのであり、教える側の都合や社会のニーズに基づいて展開されており、子どもが学ぶ理由を見出せない難しいものだと思います。そういった主権者教育や論争問題学習などを学校でどう取り扱っていけばよいのか、私自身もこれから勉強してより良い案を考えていきたいと思います。今回のご講演、本当にありがとうございました。

〇先日は主権者教育を中心とした大変学びになるお話をして頂きありがとうございました。主権者教育についてその国の制度に着目して日本はアメリカ型の主権者教育にもっと目を向けるべきと言うのは今までの自分になに新しい視点でもっと学びたいと感じました。また主権者教育の今の学校現場での限界を感じ、他の機関と関わりながら行っていくのは自分たちの世代が現場に出た時の役目だと思ったので、これからもっとそういったことも学んでいこうと思えました。ありがとうございました。