令和3年度第1回愛媛主権者教育研修会報告

令和3年度第1回愛媛主権者教育研修会報告

 令和3年度11月6日午前9時30分~12時30分に第一回愛媛主権者教育研修会がオンラインで開催されました。学生や教員など総勢20名以上の方々が参加し、ダイバーシティ・インクルージョンに基づく主権者教育のあり方について考えました。第一部は、「障害とは何か。」について考える障害平等研修(DET)を障害平等研修フォーラム認定Aランクファシリテーターの石川明代氏、UP to US Japan代表の西岡充代氏、UP to US Japan副代表      三井恵玲奈氏によって行われました。第二部は、学校と連携した福祉や人権教育の課題について講師と参加者の方々との意見交換が行われました。
 印象的だったのは、『車いす体験などの教育活動は、「障害者=かわいそうな存在」という認識を形成しやすく、「障害は社会がつくりだすものである」という認識は形成されにくい』という講師の方々の主張です。このことから学校で展開されているダイバーシティ・インクルージョンに基づく教育は、理念的なものにとどまりやすく、ハンディキャップを持つ人たちを排除する可能性があることが明らかになりました。
 このような現実を真摯に受け止め、多様な立場の人たちとの対話に基づく協働的な授業開発を進めていくことが、地域社会と連携する主権者教育を推進するためには重要となることを再認識できました。
 講師の皆様、参加された全ての方々に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
                   (シティズンシップラボ・井上昌善)

【本研修会の様子】

第二部のトークセッションでは、愛媛大学の学生や参加者の問題関心を共有して活発な意見交換が行われました。

【本研修会の満足度】

【本研修会に対する参加者のご意見】

〇本研修会を通して学んだことの中で特に印象に残っていることは何ですか?その理由も含めて教えてください。(学部生、大学院生、学校の教員、教育委員会指導主事の方々のご意見)

・「”かわいそう”にしているのは誰だろう?」という視点で授業を作ることという話が印象に残りました。常々社会の問題、みんなの問題として生徒がとらえるにはどうすればよいか考えていたので、授業実践の参考にさせてもらいます。

・障害と聞くと機能障害を考え、それにも負けず頑張っているという見方をどこかでしてしまっているような気がしていましたが、そうではなく社会や人間が作り出してしまっているものであるという認識に変える必要があると感じた。

・石川さんの言葉にあった「共生社会が実現すると、障がい者から障がいがなくなる」とうことです。障がいは、社会がつくっていることに気づけたからです。

・障害を作り出すのは社会であるという意識・考え方
理由:障害というものはその人が持っているハンディキャップのようなものだと考えていたが、実際は社会の無関心やコミュニケーション不足等によって顕在化してくるものであると感じ、障害のない社会を目指していくためのきっかけについて考えることができたから。

・JR新幹線の車椅子席は当日販売がない話を聞いて、そもそも車椅子席があることを知らなかったし、やはり健常者側の都合によって権利が侵害されているということを感じた。見ようとしなければ見えない問題は、障害に限らず生活を送る中で確実に存在すると思うし、自分事として捉えなければなかなか気が回らないという部分もあると思う。現状を知る→解決の手段を考える→広めていくという活動をしていくことが大事だなと思ったので、特に印象に残った。そもそも現状を知らなければ解決には進まないので、まず知ること・知ってもらうことが必要だと感じた。

・中学生時代の特別支援学級生徒と通常学級生徒の関わりを思い出した。私の学級は、普段特別支援学級で学んでいるが、総合的な学習の時間、特別活動の時間のみ学級に来て共に学ぶ級友がいた。私が所属していた学級は、その子が来る度に箱の穴(学級という社会の間口)の形を変形させているような気持ち悪さがあったと思い出した。その子が出入りするたびにその穴を(無理に?)変形させるために、エネルギーを消費している感覚が拭えないことに対するやるせなさが引き起こす気持ち悪さのように思える。教室の排他性を痛感すると共に、初めから誰もが入れる穴があいている状態の教室を作るためにどうすればいいのか考え続けていく必要を感じた。

・特に第二部の質問の中で、車椅子ユーザーの方と接する上で大切にしてほしいこと(気をつけてほしいこと)について聞かれた際に、石川さんがおっしゃていた「友達の荷物を持つような感覚で道行く障害者にも接してほしい」という言葉がとても印象に残りました。電車の中でお年寄りや妊婦さんに席を譲ること、段差でつまずいている車椅子の方の介助をすることに対して、これまで自分はためらってしまう時間が多く、行動した後も「変に思われていないかかえって迷惑になっていたのではないか」と考え込むことがありました。しかし、今回当事者の方の声を聴いて、自分が思っていたよりも素直に嬉しいことだと捉えている人が多いということが分かったことに加えて、自分が勝手にハードルを上げてしまっていたのだということに気付くことができました。これからは深く考えすぎず、行動に移していきたいと思いました。

・健常者と障害者の立場が逆転する映像を見て「そんなに理不尽な目にあっているの?本当に?」と心がざわざわした。

・学校教育の場において、「障害者はかわいそうな存在ではなく、社会にかわいそうにされてしまっている存在とうい考え方から始めることが大切である」という言葉です。自分の教員としての経験を振り返ってみた時に、生徒たちは車椅子体験などを通して「障害者に共感する」段階にとどまっていたことに気づかされたからです。

〇「ダイバーシティ&インクルージョン」を実現する社会の形成者(主権者)育成を目指すうえで 大切なことについて、特に外部人材と学校教育との連携方法について考えたことをふまえて教えてください。(学部生、大学院生、学校の教員、教育委員会指導主事の方々のご意見)

・社会を多角的に見る視点を養うことだと考えます。子どもが持つ社会に対する当たり前の概念に疑問を投げかけ、それを問うことが大切だと思います。しかし、教師も子どもと同様に疑問を持つことが難しい場合もあると思うため、教師も勉強をするという姿勢も同時に大切であると考えます。さらには、外部人材からの情報を受けて自分がどのように行動することができるかを考えること、つまり自分も周囲に影響を与え得る存在であると気付かせることも大切だと思います。

・当事者と出会うことで普段出会わない人への想像力を育成することが大事。

・今回の研修で重要なキーワードをいただきました。それは、「共感する」です。障害者だけではなく、外部人材全てに言えることだと思いました。教師がどんな意図を持って外部人材と連携するのか、そして外部人材は、自分がどんな意図を持って学校教育に関わりたいのか、その意図が十分に反映されるカリキュラムなのかという部分の一致や共感がないと、連携は取れず、マイナスの効果(例えば差別や偏見の助長など)を生み出す恐れもあるのではないかと考えました。地域の外部人材においては、コミュニティスクールとしての学校の機能は大きく、同時にその責任も大きいと感じました。

〇本研修会に期待すること(主権者教育の授業作りに関して知りたいこと、学びたいこと等)(学校の教員の方々のご意見)

・ぜひたくさんの授業実践を聞きたいです。日頃は業務に追われてじっくり教材研究ができないので、現場ではないような視点を示唆してくださったらありがたいです。
多様な立場の方と触れ合う機会の提供を今後とも楽しみにしています。本日の運営に携わっていらっしゃった井上先生、そして学生のみなさん、ありがとうございました。