第11回愛媛主権者教育研修会報告
2022年5月3日(火)9時30分~11時@オンラインにて、第11回愛媛主権者教育研修会が行われました。本会は、「主権者育成のための学習評価のあり方」について考えることを目的として、埼玉学園大学の堀田諭先生に「主権者育成のための『自己調整』に着目した学習評価のあり方ー英米圏の評価研究を手がかりに-」という題目でご講演をいただきました。
堀田諭先生のご講演の内容は、以下の通りです。
Ⅰ.本研究におけるコンピテンシーの捉え方
→スコットランドの心理学者・教育学者であるJohn Ravenの論についてご紹介いただきました。個人の動機をふまえた課題設定・追究によって能力が状況や環境、他者との関係の中で発揮され、それによって創発的な(集団的な)市民性の育成につながるという主張は、大変示唆に富むものだと思いました。
Ⅱ.コンピテンシーの評価の仕方
→重視される行動のスタイル(達成・親和・パワー)と効果的な行動の構成要素(認知・情動・意欲・習慣と経験)の二つの指標に基づく評価方法及び国内外の違いについて説明をしていただきました。
「できていること・できていないこと」を確認して、中立を保とうとすることの弊害について考えるきっかけをいただくことができました。
Ⅲ.主権者教育のための「自己調整」
→個人の行動の背景にある動機、個人の価値観や状況・文脈・環境、制度的制約に対する認知と変革に着目した評価実践の重要性についてご示唆をいただきました。
講演後は、参加者同士による意見交換会を行いました。
【参加者の主なご意見】
〇堀田先生の話が大変勉強になりました。評価の方法のところで、レイブンが「他者とのかかわり」「将来の成長や動機づけに与える影響について述べることができる」という話がなるほどなと思います。そのような指導、授業づくりを今後も考えていきたい。
〇評価指標が印象に残ってます。x-y軸のような感じでチェックボックスから見る方略も学校現場で使えそうだと感じております。
〇動機を促す課題をどうするか…ということです。社会科でもどんなことでも、子どもへの動機づけについて考えて続けていきたいと思いました。
〇「人はじぶんにとって重要な活動をしているときだけ,その能力を発揮することになる」というレイヴンの言葉です。児童が目的意識をもっていない授業での一場面を切り取って,断片的な評価をしていないかと自己の指導を振り返りました。児童が学びに向かう文脈や状況,環境を授業の中で保証した上で,連続的な資質能力の評価ができる手立てを考えたいと思います。
〇個人の動機×課題→能力(状況・環境・他者)の捉え方は興味深かった。特に、課題と動機を関連付けて考えること、学校段階・発達段階で連続的な評価を行うことの重要性について考えることができた。
〇”生徒の動機を大切にするという点が重要であり、教師の立場としては動機を促進させる課題が求められているのだと感じた。記述文による評価で、個人の価値観や状況・文脈・環境等を描写することの必要性について印象に残った。評価の在り方について考えることが、授業をどのようにつくっていくのか、また、どのような力を育みたいかに繋がっていくのだと感じた。”
〇レイブン氏の、人は自分にとって重要な活動(価値観に基づく活動)でなければ、能力を発揮しないという主張が印象に残った。従来の教育は、問いや学習活動を教師側が設定するものであり、それが子どもの価値観に基づいているとは言い難い。そのような学習の過程を評価され、自らに不足している部分を指摘され、調整を強いられるのは酷なのかもしれないと考えた。評価する側とされる側の間の力関係を指摘された思いがしたため、特に印象に残った。
ご参会の皆様、ありがとうございました。今後も主権者育成を目指す学習評価のあり方(「指導と評価の一体化」)について、考えていきたいと思います。