合同研究会報告

合同研究会報告

2021年3月6日(日)午前中に、シティズンシップラボ(愛媛主権者教育研究会)・愛媛大学附属高等学校教育研究会地歴・公民科の部合同研究会が開催されました。当日はオンラインも含め約40名の方にご参加いただきました。

【当日の流れ・発表の概要】
9:30~9:35 趣旨説明

①9:35~9:50
「外部人材と連携した小学校社会科授業作り―第5学年『情報を生かす産業』の実践を通して―」
愛媛大学教育学部付属小学校教諭 品川崇先生


本発表は、愛媛大学教育学部付属小学校の社会科部の外部人材と連携した社会科授業実践に基づく研究成果を中心とするものでした。外部人材と子どもの双方向性を生み出すための教師の働きかけについて示唆を得ることができました。

品川崇先生の発表

 ➁9:55~10:10
「持続可能な社会の実現に貢献する実践者の育成-『第二次世界大戦と人類への惨禍』の実践を通して-」
愛媛大学教育学部付属中学校教諭 江角紀行先生


本発表は、愛媛大学教育学部附属中学校の社会科歴史的分野の授業実践(3年生対象)に基づく研究成果を中心とするものでした。特にICT活用を通してどのように思考を促し、議論を活性化するかという点について示唆を得ることができました。

江角紀行先生の発表

③10:15~10:30
「主権者育成を目指す中学校社会科学習モデルの開発 ー2050年、地球で活躍する私たちの選択は?ー」
愛媛大学教育学部附属中学校教諭 高橋祐貴先生


本発表は、愛媛大学教育学部附属中学校の社会科と理科の合科学習モデルの開発の研究成果を中心とするものでした。主権者育成のための他教科との連携の必要性及び社会科だからこそ育成できる力について検討する重要性について示唆を得ることができました。

高橋祐貴先生の発表

(10:35~10:45 休憩)

④10:45~11:00
「主体性、協働性を育む授業づくり」
愛媛大学附属高等学校教諭 谷井正和先生


本発表は、愛媛大学附属高等学校の公民科の授業において子どもの主体性、協働性を育成するための学習環境について、子どものアンケート調査結果をふまえて検討したことを中心とするものでした。これからの学習環境のあり方及び新科目公共の学習課題を設定する際の視点について示唆を得ることができました。

谷井正和先生の発表

⑤11:05~11:20
「ESDに関する教育プログラムの開発」
愛媛大学教育学部准教授 藤原一弘先生


本発表は、「探究」型の教育活動の現状と課題を中心とするものでした。特に、現状の教育活動における「探究」が、「やらされ探究」になっていないかという指摘は大変興味深いものでした。「やらされ探究」に陥らないための手立てをどのように考えればよいのかという点について、考えていきたいと思います。

藤原一弘先生の発表

⑥11:25~11:40
「主権者育成を目指す社会科授業開発の視点と方法―学習指導要領改訂の趣旨をふまえて―」
愛媛大学教育学部講師 井上昌善先生


本発表は、新学習指導要領の趣旨をふまえた社会科授業開発の視点と方法を中心とするものでした。主権者育成のための社会科授業開発の視点と方法は、「(社会的)課題」と「議論」だと考えております。今後においても具体的な授業開発、実践に基づいてこのことを検証していきたいと思います。

井上昌善先生の発表

⑦11:45~12:00
「NPOにおける主権者教育の取り組み―令和2年12月23日『主権者教育推進会議』の議論を含むー」 
NEXT CONEXION代表 越智大貴氏


本発表は、NPOにおける主権者教育の特質、学校現場における主権者教育との違いを中心とするものでした。特に、「政治的中立性」や「子どもと外部人材との関わり」のあり方について学ぶことの必要性を感じました。そもそも「政治的中立性」が実現されることは可能なのか、「政治的中立性」を保障しようとする教育的配慮のあり方とは、という点について考えていきたいと思います。

越智大貴氏の発表

【参加者の主なご意見①:本研修会を通して学んだことの中で特に印象に残っていることは何ですか?その理由も含めて教えてください。】

・子どもにとって遠くなってしまいがちな問題をそれでも近付けてどうにか考えさせるためには、物理的な距離を近付ける必要があることが分かりました。そのためにも手足を動かして繋がりを広げたり、興味の持ちやすいツールを導入したりとアップデートし続けなければなにも始まらないということを、苦労しながらも前に進もうとしている先生方の実践を見て、改めて感じました。また、学生さんの発問の作り方については、どう聞けば、より子どもたちの考えが深まるか、自分なりに考えながら聞けた良い機会でした。(小学校の先生)

・小・中学校の発表では、子供の疑問から学習課題を作り、もっと知りたいという気持ちになれる、自分ごととして捉えられるような授業の展開の大切さを感じました。今年度は児童の発見や疑問に寄り添えないまま進めた部分も多かったと、自分の授業を反省しました。(小学校の先生)

【参加者の主なご意見②:】

・具体的な世界の中での議論,抽象的な世界の中での議論,社会科で養われる議論,算数・数学科で養われる議論,それが子どものなかで総合され,持続可能な社会を支え,レジリエントでたくましい力へと結びついていくようになればと期待しています。(大学の先生)

・子どもにとって切実性や当事者性が持てるような課題を設定することに加えて、子どもの方からもっと知りたい・学びたいといった前向きな言葉が出るように、問いを工夫したり適切な資料を適切なタイミングで提示したりすることが重要だと思います。(大学生)

(企画・運営者より)
 今年度は、小中高等学校の先生方やNPO、社会教育の分野でご活躍の方にご支援をいただくことで、地域社会と連携する主権者教育の現状について理解を深めることができました。新学習指導要領に基づく教育活動が実践されるようになれば、学校と地域社会との連携は、「よいことである」という前提に立った取り組みが多くなされることになります。そこで重要になるのは、この前提を対象化することではないでしょうか。つまり、「なぜ、連携が必要なのか」、「子どもにとってどのような意義があるのか」を常に問い、連携する意義について追究することが、主権者教育を推進するためには必要になると考えます。このような問題意識に基づいて、次年度以降のシティズンシップラボの活動では、引き続き地域社会と連携する主権者教育のあり方について参加者の皆様と議論を深めていきたいと思います。
 最後になりましたが、今年度シティズンシップラボにご協力いただいたすべての方々に感謝申し上げます。誠にありがとうございました。今後ともご支援ご指導の程、何卒よろしくお願い申し上げます。
(シティズンシップラボ代表・愛媛大学教育学部社会科教育講座 井上昌善)